彩-aya-1
中村大財閥の令嬢になんて、何でなってしまったんだろう?
その業界の中で、あたしは違うあたしでいる。
―――舞蝶。
普段のあたしとは違う、別人。
清楚で、穏やかで、品のある、女。
これが、辛い。
辛くて、虚しくて、苦しくて、重い。
でも、こうしてないとダメだから。
こうしてないと、中村大財閥は終わりだから。
あたしは、舞蝶として居続ける。
すぐに部屋に入り、いつもの着物を羽織る。
もう少しで着替えが終わるという頃、
「ヤナギ!!! アヤは何処だ!!? まさかまだ帰って居らんと言うまいな!!? 貴様は一体何をしてるんだ!!!??」
あたしの、嫌いな声が響く。