彩-aya-1





中村大財閥の令嬢になんて、何でなってしまったんだろう?


その業界の中で、あたしは違うあたしでいる。




―――舞蝶。


普段のあたしとは違う、別人。


清楚で、穏やかで、品のある、女。



これが、辛い。


辛くて、虚しくて、苦しくて、重い。



でも、こうしてないとダメだから。


こうしてないと、中村大財閥は終わりだから。


あたしは、舞蝶として居続ける。


すぐに部屋に入り、いつもの着物を羽織る。



もう少しで着替えが終わるという頃、


「ヤナギ!!! アヤは何処だ!!? まさかまだ帰って居らんと言うまいな!!? 貴様は一体何をしてるんだ!!!??」


あたしの、嫌いな声が響く。




< 96 / 168 >

この作品をシェア

pagetop