彩-aya-1
ヤナギを怒鳴らないで。
ヤナギは悪くないの。
ヤナギはただ……
「すみません、ご主人様。ですが、門限前にアヤ様は既にお帰りになさり、準備をして居られます。もう少し程、お待ち下さい」
ヤナギの凛とした声があたしの耳に響いた。
ごめん、ヤナギ。
ありがと。
「……ならいい。早く用を済ませ」
その声で、あたしの手は再び動く。
そいつが去っていく足音を確認しながら、手を動かす。
そして、着付けが終わり、
「ヤナギ!」
ふすまを開けると、中庭を見つめてるヤナギがいた。
その横顔はとても綺麗で、悲しくて、美しくて――…
あたしは、思わず言葉を飲んだ。