彩-aya-1





ヤナギはあたしに気付き、ふっと笑顔を洩らす。


「間に合いましたね。では参りましょう」


そう言い、先を歩いて行く。



ヤナギは度々、その表情を見せる。


そして、無理して笑ってる。



あたしはヤナギの事情を知ってるから、簡単に“寂しいでしょ”“苦しいでしょ”“大丈夫?”なんて言わない。



そんな事したら、ヤナギが……。


「アヤ様のご支度が終わりました。失礼致します」


ふすまが開き、大きな机が目に入る。


そこには、笑顔のあいつと、お兄ちゃんと、弟がいて、


「久しぶりです、お兄様、奏汰様。失礼します、お父様」



―――なんでこんな事をしなけりゃならないんだろう。


「あぁ。アヤ、そこに座れ」


指定された席に着くあたしは、まるで生きたロボットみたいで。




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