甘く甘く、時に苦く。
いつもと変わらない朝。
頬には、一筋だけ涙の痕があった。
ゆっくりと起き上がり、中学校へ行くために制服に手を伸ばした。
『ユ・・・キ』
そしてふと、夢の内容を思い出してみた。
夢の世界では明細なのに、現実の世界ではあやふやなようで、夢に出たであろう少年の名前も思い出せなくなっていた。
『ユ・・・ユ・・・キ?ユキ?』
すっきりしないまま制服に手を通し、支度を整えて1階へと降りていった。
『おはよ~』
「あ、おはよう李玖。早くご飯食べちゃいなさい」
毎朝毎朝同じ台詞。
適当に返事をして、むしゃむしゃと朝ごはんの食パンを咥えた。
『ん?おかーさん・・・仕事?』
「あ、そうだわ。今日出張でね。帰るのは明日になっちゃうから。」
これまた適当に返事をすると、夕飯は自分で支度してねとだけ返ってきた。