to be
導入


「おはようございます!!」



朝っぱらから、頭の痛くなる甲高い声が、後ろから飛んでくる。



「うるっせぇな…、二日酔いで頭痛ぇんだよ」

「先輩、また朝まで飲んでたんですか?」



呆れた顔で、俺に視線を送るこいつは、高橋良太(たかはしりょうた)。

同じ大学の後輩で、俺のいるサークルに入ってきたのがきっかけで知り合った。

目が大きく、屈託の無い笑顔に加え、小柄な体系というのがこいつの特徴。

何がいいのか、サークルの女共はこいつがお気に入りらしい。


で、目を充血させて、酒気を帯びた息を吐き出す俺が、土屋和彦(つちやかずひこ)だ。

普通の大学生だ。たぶん。


「ところで先輩、『to be』って知ってますか?」


気を遣って、小声で話す良太。

知ってるも何も…。


「CMで良く見るあれだろ?」

「はい!!」

「うっさぃ!!ぃ……いって…自分の声が痛い…。」

「大丈夫ですか?先輩?」

「もうダメ、死ぬ。」


あー、頭が痛くて死ぬ。

今日が命日だ。

やっと花も恥じらう20歳になったというのに。

これから、酒も堂々と…。


「そんなことより、先輩?話の続きなんですけど。」

「あ?」


俺の嘆きを妨害して、何事も無かったように話を続ける良太。

こいつは、人の気持ちを考えると言う事がだな…。

俺が言えた義理じゃないか。
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