ヘタレの恋
「どこに行かれるんですか?」

びっくりして声の出ないオレにかわって、その彼女はお婆さんに問いかける。

同じ濃紺のブレザーを着ているから、西山学園の生徒だろう。

真新しい鞄がもしかしたら同じ1年生なのかもしれない。

「すまないねえ。駅まで行きたいんだけど。」

「じゃあ、そこまでつきあいますね。」

「いいのかい?」

「駅まで近くですし、時間もあるので大丈夫です。」

「ありがとう。」

「いいえ。気にしないで下さい。」

そういうとオレの方を見て、お婆さんの荷物を差し出した。

「手伝ってくれるんでしょ。」

オレに荷物を渡すとお婆さんの手をとって駅へ歩き出す。

まあ、元々手伝おうと思っていたので彼女の後を追った。


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