ヘタレの恋
「あっ・・・んっつ。ダメだったら・・・。」

家に帰ったオレの耳に入ったのは昼間から聞くにはからヤラしい声。

(またか・・・。)

そうため息をつくとわざとらしく音を立ててリビングに入る。

「・・・あら、翔。お帰り。ずいぶん早かったのね。」

さっきのヤラしい声の主は何事もなかったように声をかけてきた。

緩やかに波立つ黒髪に大きい黒い瞳を持つ可愛らしい雰囲気を持つ女性、オレの母だ。

「久しぶりだな、翔。」

同じように何事も無かったかのように声をかける人物、オレの父だ。

オレを20年歳ととったら父のようになるのだろう、そう思うぐらいにソックリだ。

違うのはオレには父のような独特の貫禄が無い事。

父は今でもオレの理想の父だ。

「お帰り。1ヶ月ぶりぐらい?台湾はどうだった?」

「うまくいったよ。あっちでも販路が伸ばせそうだ。」

「お疲れさま。」

そういって母は、父に軽くキスをする。


年頃の息子がいるのだから、正直勘弁してほしい。


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