I'll give…
「嬉しいわ~…」
碧さんが突然こんなことを言い出す。
「何がですか?」
私が聞くと、
碧さんは私に笑顔で言った。
「私ね、娘とお料理したりガールズトークしたりするの夢だったの!でも、うちは男ばっかりでしょ?だから、小町ちゃんが来て、娘ができたみたいで嬉しくって。」
碧さんが私のことを『娘』だと言ってくれて、すごく嬉しかった。
他人扱いしないで、自ら中へ引き入れてくれる。
こんな家庭が、こんな近くにあったんだなぁ。
「だからね、小町ちゃんも私をお母さんだと思って、どんどん甘えて来てね!」
そう言われてハッとした。
そうだ、私、お母さんってどんな存在なのか知らない。
ううん、お母さんだけじゃない。
お父さんっていう存在も、兄弟っていう存在も、家族っていう存在も、
私はずっと知らないで生きてきた。
だから、私はそういう人達に対する甘え方なんて知らない。
だけど、甘えていいのかな…?
自分なりの甘え方で甘えてもいいのかな…?
「碧さん、今度ショッピングに行きません?私、お母さんと買い物するの、夢だったんです。」
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