AZZURRO
「こちらをお使いください。」


雪乃が通されたのは
天蓋付きベットと簡易なテーブルセットが置かれた
シンプルな部屋だった

雪乃は投獄されると思っていただけに
すっかり拍子抜けしてしまった


「申し訳ありませんが
今宵はこちらでお休みください。

明日にはきちんとした部屋をご用意いたします。

なにかありましたら
侍女にお申し付けください。」


失礼します。
と言葉を残しハビエルは出て行った


ドアにカギがかけられる様子はない…


…あれ?
こんなんじゃ
逃げたい放題じゃん?


今すぐ逃げだそうかとも思ったが
ブレイクの言葉がひっかかり

雪乃はおとなしく
窓に備え付けられた長椅子に腰かけた


「…クリス様…ケシャ…。」

ケシャは助かったのかな…?

不意にそよ風が雪乃の頬をなでた
それはなんだか
温かくて…優しくて…


クリス様は風を操る風の民…

もしかしたら…


雪乃は小さく微笑んだ
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