AZZURRO
「殿下の母君、先の皇后陛下は
民を想い、国を想うとてもお優しい方でした。

皇帝陛下のご寵愛を一身に受け
殿下を授かった時には帝国じゅうに歓喜がわきました。」


パルトは遠いどこかを見つめていた


「しかし
殿下の誕生を快く思わない連中も
王宮を含め後宮には溢れていました。」


「…皇位継承権…。」

雪乃のつぶやきに
パルトはゆっくりと頷く


「殿下は皇帝陛下と皇后陛下のご長男。
生まれる前から皇太子としての皇位継承権が約束されてました。

側室や自分の娘を妃にと考える大臣たちにとっては
まさに目の上のこぶ。

ご懐妊がわかってから皇后陛下へのいじめや
暗殺未遂が相次ぎました。」


「…ひどい。」

生まれる前から大きな物を背負って
自分の意思に関係なく命を狙われる

私の世界ではあり得ない話

でも
陰謀渦巻くこの帝国や王宮内では当たり前のこと…


皇帝の地位は
この世界で絶対なんだ…

今まで考えもしなかった
権力争い…
その底知れぬ闇に雪乃は背筋を震わせた
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