AZZURRO
雪乃はゆっくりと顔を上げる

それぞれにフードをかぶっていて
乗馬している人間の顔が確認できない


しかし
次の瞬間

雪乃は一人の男に目がとまった


その男の瞳だけ

深い藍色で
隙間から銀糸が見える


ま…さか…


雪乃が声を発するより先に
その男は雪乃を抱きしめた


「遅くなってすまない…。」


しっかりと鼓膜を震わせたその声は
雪乃がずっとずっと待ち望んだものだった

そして
男はフードと顔半分を覆っていたマスクを摂る
スッキリと鼻梁の通った美しい顔立ち
そこにハラリとかかる輝く銀糸
そして
力強くも優しい
空と同じくらい濃く澄んだ深い藍色の瞳

「…ク…リス…様…。」

掠れる声で呼ぶとクリスは雪乃を胸深くに抱きしめた

「雪乃…。
…無事でよかった。」


背中にまわされたクリスの手は微かに震えていた


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