AZZURRO
そんなジャンの思考など
雪乃はみじんも感じることは無く
ケシャと楽しそうに話している


この世界には無い象牙色の肌と
艶めく黒髪に黒曜石の様な深い瞳

憂いを含んだその笑顔は
どこか儚く診る物を惹きつける


家臣として主の幸せを考えるのは必須
もしあの娘がクリス様に害をなすようなら…


「どうした?
眉間にしわが寄っているぞ?」


不意に聞こえた声にジャンははっと我に返る

気が付けばクリスが興味深そうに
ジャンを見ていた


「いえ、少し考え事をしておりました。」


「ほう…。さほど難しい案件なんだろう?
いつも以上にお前の顔が老けこんで見える。」

含み笑いでクリスが言う

こんな風にジャンをからかう事が出来るのも
唯一クリスだけである


「さようでございましたか。
ええ、とても難しい案件で…
公務をすっぽかしてまで寵妃を迎えに行くと言い出した
君主をどう説教するかなんですよ。」


にっこりとだがまったくもって冷たい頬笑みで
クリスを見るジャン

クリスは思わず身を引いた
この顔の時は必ず良くない事が起きると
長年の経験でわかっているからだ
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