AZZURRO
宴も順調に進み

いよいよ雪乃の舞を披露する
時間がやってきた


「ただいまより、
皇后陛下のご生誕をお祝いして
ユキノ・カ―シギ姫より舞の献上が行われます。

ご列席の皆様
どうぞ中央舞台にご注目ください。」


家臣の声に広間に静寂が満ちると

シャンシャンシャン…

雪乃の足についた鈴が
鳴り響いて広間を覆い包む


マントを頭からかぶり
体を覆い隠すようにして雪乃は
舞台の中央まで歩み出る


そして
音楽が始まると同時に高々とマントを
脱ぎ捨て雪乃は舞を始めた


アルヴェスに古くから伝わる
花の唄


その優しくどこか懐かしいメロディに
まるで遊んでいるかのように
雪乃体は優雅に舞う

たおやかで美しく
ふわりと揺れる漆黒の髪

長いまつげから除く黒曜石の瞳

光を浴びて輝く象牙色の肌


誰もが目を奪われ
作り出す世界に吸い込まれた


そして
最後に声高らかに雪乃は歌う

「この想いをあなたに…

私の全ての愛と希望を
吹き抜ける風に乗せて

誰よりも美しく
愛おしい…あなたに…。」


澄んだ声が会場を包み
そして
最後の鈴の音とともに

雪乃は深々と頭を垂れて
両陛下の前に跪くと
広間に割れんばかりの拍手が響いた
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