AZZURRO
「あの女か。ずいぶんと抵抗しやがって。」

強面の男が
悔しそうに左ほほをなでる

そこには猫に引っかかれたような
三本の引っかき傷があった


「そうそう、兄貴やられてたもんね。
でも、少し殴りすぎたんじゃないか?」


「ふん。
アレくらいでちょうどいい。」


ケシャを殴った?

ケシャはまだ城内にいるんだ

もう
発見されたかな…


無事だよね?


自分の置かれている状況にもかかわらず
雪乃はケシャの身を案じ
天井の隙間から顔を見せた月に
祈った


「まぁ、なにはともあれ
後はこの姫を引き渡して
残りの報酬をもらえばこの国からもおさらばよ。」


「引き渡しにはまだ時間があるんだろ?
なら、少し寝ようぜ。
朝からいろいろ準備してたから
もう、限界だよ。」


「ああ。
引き渡しは明け方だからな。

ただし、あの男には注意しろよ。
何考えてるかわからねー。
ただの神官とは違うぞ…。」


あの男?


私の誘拐をこの二人に命じた
真犯人…


神官なの?
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