AZZURRO
神官は大神殿に務め
父なる全知全能の神ゼムスと
その娘たちの
四人の女神に仕える


神事や祭りごとはもちろん
皇族達からの信頼も厚く

皇子や皇太子の納める主要都市では
皇子たちが不在の時はその代わりを務め


高位の神官は
皇帝や皇后の話し相手にもなる事がある


雪乃は
一度だけ
クリスと親交のある神官に会っていたが
その穏やかで、優しげな風貌から
彼ら全てがこんな感じなんだ
と決めつけていた為


こんな事を企てるような神官がいることに
驚きを隠せなかった


「そうえいえば
街中に急に兵士たちが増えたよな?

しかもクリス皇子の近衛兵たちだったぜ。」


「ふん。
この姫を探しているんだろうよ?
なんたって、あのクリス皇子の初めての側室にして
宮に閉じ込めてしまうくらい溺愛している
唯一の寵妃…。」


げっ…
巷ではそんな風に噂になってったんだ…


クリスが探してくれている事を知った雪乃は
少しだけ心が明るくなった


「でも
いくら皇子が探したって
ここは見つけられねーな。」



「ああ。
まずここを知っている人間が少ないからな。
まぁ、あと数時間の辛抱だ。」


男とたちの会話を聞きながら
雪乃はこの場所がどこなのか


どうすれば逃げ出せるか必死で考えていた

残し数時間…

それまでに
なんとかここを抜け出して見せる

クリス様…

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