AZZURRO
翌日
皇帝陛下に挨拶に行くクリスに連れられて
雪乃もアルヴェス城に来ていた


回廊を進むと
見五たな像や浮彫のレリーフが連なっていて
圧巻だった


正装のクリスはいつもよりも凛々しく
第二皇子の品格や知性がにじみ出てくるようで


雪乃は
この国の女性の正装と言われる
ドレスに身を包んだ自分がとても貧相に見えた


謁見の間は
そこかしこに細かな装飾が施され
床には神話を描いたモザイク、壁は花や魚など
が色彩豊かに描かれていた


そして
金銀の装飾と宝石が輝く
王座には

300を超える民族と小国からなる
アルヴェス帝国皇帝
ロンゴリア・ムラハム2世の姿があった

その姿は
初老とはいえ未だに勇ましく
気品を感じさせる

「クリス…帰ったか。」

初老の男性の声が響くと
クリスはスッと跪いた

雪乃も慌てて跪く

「は。
ご挨拶が遅れまして申し訳ありません。」


「よいよい。
お前の顔が見れただけでよき土産じゃ。」

「ありがたきお言葉。
恐れ入ります。」


クリスと皇帝の声が日響くその空間に
雪乃はただただ
緊張して震えていた


どうしよう…
皇帝陛下に挨拶って…何言えばいいの?!


ついさっきクリスに
挨拶をしてほしいと言われたばかりで
雪乃の頭は空っぽだった

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