AZZURRO
「母親はすでに死んでいました。
こいつだけ彷徨っていたのを
拾ってきました。

皮をはげばそれなりの価値にはなるかと…。」


ポールの口から出た言葉に
雪乃の喜びと興奮は一気に消えうせた


「か、皮をはぐ??」

こんな幼い子供の
皮をはぐなんて…


大きな瞳はどことなく潤んで見える

そんな瞳を見つめていると
雪乃の中にある決心が浮かんだ


「ポールさん。
この子私に下さい。」

「は?
獅子をですか?」

「はい。」

驚くポールに雪乃は言葉を続ける

「こんな幼い子の
皮をはぐなんて耐えられません。

この子は私が育てて森に返します。
どうか譲ってください。」


育てられるかなんて自信はなかった
森にかえすなんて出来るかどうかわからなかった

それでも
皮をはがされるこの子を
放ってはおけなかった
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