差別
やさしい先生
「おはようございます、今日は静かに自習をするように。」
こうして、3学期の最初の2日間は自習で終ってしまったが、翌日からはやっと後任の先生がやってきた。
「今度の、君達の担任になる先生を紹介します」
 1時限目に教頭先生がやってきて、次の先生を紹介した。
「今度、このクラスを受け持つ事になりました。」
黒板に大きく、先生が自分の名前を書き「おの けんじ」と漢字の「小野健治」の二つに書き分けて、皆にわかりやすく自己紹介をした。
 小野先生は、丸い顔に白髪が混じった頭髪を横に分けて、40代後半の体格のいい姿で若い頃はフットボ―ルの選手だったそうだ。小野先生が来たおかげで、教室の中は和やかな時間を取り戻した。しかし熊坂先生が辞めた理由や、その後の事は聞かされなかったが誰も口にする者もいなかった。
 
 体育の時間になると、「ポ-ト・ボ―ル」なる低学年用の球技を教えてもらい、益々小野先生の周りに児童達が集まりだした。
「先生!もっと教えてください。」
「この大きなボ―ルを使うゲ-ムを、もっとしりたい!」
 授業の終わりのチャイムがなっても、小野先生の周りを皆は取り囲んでいた。
「もう体育の時間は終ったから、教室にもどろう」
「先生!」「小野先生!」「もっと教えて!」
「仕方がないなぁ、それでは最後にこのボ―ル空高く蹴るから、それが最後だ。」
 そういうと、ボ―ルヲ両手に持って軽く上に投げると、フットボ―ルで鍛えた先生の足が勢いよくそのボ―ル蹴った。ボ―ルは空高く舞い上がり、見る見るうちに米粒のように小さくなった。皆はそのボ―ルを追いかけ、余に高く上がったボ―ルを見失い、皆は左や右に散り散りになり、懸命に空高く上がったボ―ルを探した。
「見つけた、あのボ―ル僕が取るから!」
 ひとりの児童がそう言うと、それを聞いた皆は我さきに彼の元に集まって、団子状態になってボ―ル待ち構えた。しかし米粒くらいのボ―ルは、なかなか大きくならない、横風が吹いたらボールが右にそれて、団子の集団もそれを追い右に動くと、その時誰かが叫んだ。
「落ちてくるぞ!」
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