差別
「どこさ、僕には見えないぞ!」
「どんどんボ―ルが大きくなる!」
「ワ―ワ―!」
 米粒くらいになったボ―ルは、ビー玉くらいに大きくなり益々膨らんでいくのが、先ほどの舞い上がった時間より早くなって、そのボ-ルの迫力はすさまじかった。皆は胸をドキドキさせながら、落ちてくるボールを追っていた。
「落ちてくるゾー!」
 誰かがそう言うと、皆はざわめき立って悲鳴すら聞こえた。
「オオーッ」「ザワザワ・・」
「怖い!キヤー!」
 皆は、小野先生が蹴り上げたボールに夢中になっていたが、無常にも団子の集団から5メ-トル程はなれた所へ落ちた。
「ボトーン」
 落ちたボ-ルを我さきに追いかけて、やっと捕まえた時に振り返ると、小野先生の
姿はもう其処には無く、校舎の入口近くに立っていて大きく手を振って、皆を呼び寄せていた。


 土曜日は午前中だけが授業で、午後からは下校の時間になるが、小野先生はまた皆を虜にするような事を考えた
「今日は土曜日なので、午前中の授業だけですが、その後に先生がお話を聞かせます。」
「聞きたい人は、そのまま残っていてください。」
 不思議にその日は土曜日なのに、皆は帰ろうとはしなかった。熊坂先生の時は、強制的に残されたのに、今では進んで小野先生の話を聞きたがっていた。
「おや、皆は帰らないで待っていたの!」
 皆は今から何が始まるのか、期待感で胸をいっぱいにして小野先生を待っていた。
「先生、お話ってどんなお話ですか?」
 待ちきれない子が、堪らずに発言した。
「今日のお話は、木下籐吉郎の事を話します。皆この人の名前を知っているかな?」
 クビを傾げる皆の顔を見て、小野先生は見てニンマリ笑って話しを始めた。最初は橋の上で寝ていた主人公の「日吉丸」が織田信長に出会う場面から始まった。先生の話に皆は聞き入って、息を呑むのを忘れて聞き入っていた。
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