差別
「やい!俺が寝ている所に、踏みつけて行くのは誰だ!あやまれ!」
「おや?橋の上に人が寝ているとは、知らなんだ。」
「雨露を凌ぐのに橋の下で寝る者はいるが、橋の上で寝るとは大胆不敵な奴め!」」
「やい!俺に謝るか、それとも俺を家来にするか!どっちかにしろ!」
 この問答を、皆に判りやすく解説しながら、おもしろく話を作り替えて聞かせてくれる、そんな先生にまた皆は夢中になった。
 草履取りをしていた主人公が、戦に向かう場面も独特な表現で話すので、皆に心はひとつになっていた。
「サル!お前は今度の戦には連れて行かん!留守番をしとけ!」
「日吉丸は、信長の言い付けを聞き、大人しく留守番をするフリをして、」
「黙って後からついて行きました。」
「しかし、鎧や兜を持たない日吉丸は、道具部屋にある有り合わせの具足を身に着けた」
「有り合わせだから、右の袖はこんなに短いのに、左は長すぎて手の平が隠れるほどで」
「兜は探しても無いので、鉄鍋を頭から被ってヘンチクリンな格好で、信長の後を・・・」
 そのお話が、あまりにもおかしいので、皆は土曜日が待ちどうしいのでたまらない、その事を他の若い先生が聞きつけて廊下から聞いている事もあった。
  

 そんな楽しい出来事があった頃、突然あの熊坂先生が学校にやってきた、小野先生から授業の前にその話があり教室の皆は騒然となった。
「今からの授業を始める前に、皆さんに合わせたい人がいます。」
「懐かしいでしょうから、ゆっくりお話をしてください。」
 そう言って小野先生は教室を出て行くと、入れ替わりに熊坂先生が教室に入ってきて教壇の上に立つと、懐かしそうな顔をしてクラスの皆の顔を見渡しました。
「皆さん、久しぶりに会う事が出来ましたね、先生も気がかりでした。」
「久しぶりですから、出席を取りたいと思います。」
 そう言って熊坂先生は、皆の名前順番に呼び出した後、皆を校庭に連れ出しでた。
「それでは、皆で外に出て見ましょう。」
 
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