差別
皆は熊坂先生の言われるままに、校庭に出て彼女の指示通りに動いた。
「ジャングルジムの所に行きましょう。」
「あなたは、そこにいて!それからあなた達はこちらに集まって!」
 熊坂先生に背く者は誰もいない、彼女の気にった子を回りに置いて、そうでない子を遠ざけている。そして誰かを待っているような様子で独り言を言った。
「遅いわね、まだかしら、あの人。」
「先生!誰か来るんですか?」
「写真を撮ろうと思って、呼んであるのよ」
 その時、1台の自動車が学校に入ってきた、中からカメラを持った男性が飛び出して、息を弾ませて走ってくる。
「遅いじゃない!」
「ごめん、遅くなった。」
「じゃ皆そのままで、写真に写りましょう」
 自分の教師姿を、カメラに収めたかったようで、悠太を近づけることも無く、また遠くに指示する事も無かった。空気のように無視され続けた時間だった。
 熊坂先生は写真を撮り終わると、さっさと校長室の方に行ってしまった。皆はしばらく校庭に居たが、誰かが教室に戻りだしたら、その後を追うように皆教室に戻った。
「私、教室に戻ってみる」
「私も行く!」
「僕も戻ろう、行こうぜ!」
 その日は、校長室に熊坂先生は行ったまま、僕らの所えは戻ってこなかったので、教室はザワザワして隣の先生に注意された。その後にあわてて、小野先生が飛んできたが、教室の中は昨日までの和やかな雰囲気とは打って変わって、静かなままだった。もう熊坂先生が来ない事を祈りながら、悠太はその日も静かに過ごした。
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