差別

子供か、両親が働いていて家には誰もいない家庭の子供は手を上げなかっただろう。その時間に先生の話に夢中になっている者はわずかな人数で、ほとんどの児童は早く帰りたいと思うのは当然だと思う。
　早く遊びたい気持は、７歳くらいの子供なら当然あるし、素直な気持を表現するのは子供の特権なような物だ。
「ハ―イ」「ハ―イ」
子供達は喜んで手を上げた、授業が終ったと聞いて我先に飛び出したい勢いだが、熊坂先生は思ってもいない事を言い出した。
「手を上げた人は、立ち上がってください」
「手を上げなかった子供達は、もう帰っていいから気を付けて帰りなさい。」
この時秋月悠太は、手を上げて立ったまま帰る子供達を見ていた。悠太は、最初は手を上げるのを躊躇したが、周りの子供が手を上げるのを見て、つられて上げてしまった。
（しまった、手を上げるのでは、なかった。でもすぐに返してもらえるだろう。）
悠太はそう思ったが、別に早く帰りたい理由があった訳ではない。教室の中は、熊坂先生と手を上げた子供達が２０名ほど立っていた。
そのあと、手を上げていた男の子の１人が、勝手に帰ろうとした。
「チョット待って、あなたは手を上げたからまだ帰ってはいけません。」
「でも、僕は帰りたいです！」
「すぐ終るから、元のところに戻りなさい。」
こう言うと素直に男の子は引き返したが、熊坂先生はこの後とんでもない事を言い出した。
「はい、手を下ろしてもいいわ。みんなは、何で残されたか判っているでしょうね！」
「では、今から先生の後ろを一列になって、ついて来なさい！」
先生は窓側の子供の前に立つと、教室の端の方を歩き出して子供達はそれぞれ後に続いて歩き出した。悠太は窓側とは反対の廊下側にいたので最後尾の方を歩いている。