差別

教室の端を、子供達はゾロゾロと歩かされて、2週目からは子供達だけで歩かされている。
「さあ、シッカリ歩いて、手を大きく振って！」
悠太は、歩かされている理由がはっきり飲み込めなかった。早く帰りたい人は手を上げてと言ううから素直に手を上げたのに、あれは手を上げてはいけなかったのか、先生に騙されたのか、罠にはまったのか何故そんな事をするのだろうか。まだ７歳の子供達には、そんな洞察力は働かない、動物的な感性だけで従っている。
　５週ほど廻ったら、一人の女の子が先生に話しかけてきた。それは話しかけると言うより、ペコペコ頭を下げて平謝り訴えかけていると言ってよかった。
「センセー、今から何でも言う事を聞きますから、今日は帰してください。」
熊坂先生は、そんな嘆願も聞き入れなかった、そのまま歩くように釣り上がった目で女の子を歩かせた。
（あんなに頼んでいるのだから、あの子を許して上げればいいのに。）
悠太は、他人事のようにそう思ったが、自分も強制的に歩かされているのに、そんな事はお構いなしで、安気な気持でいた。
（あと何週か歩けば、先生も許してくれるだろう。）
許しをこうた女の子は、あれから１週目に許されて列から外れて行った。それから口火を切ったように一人ずつ列から抜き出されて、みるみる内に２０人ほどいた列が半分の１０人くらいに減ってしまった。
（アレ―、随分少なくなったなぁ、僕の番はまだかなぁ、ちゃんと歩いているのに！）
（あと二・三人目には、僕も列から抜き出されて、帰る事が出来るだろう。）
　悠太はまだのん気にそう思っていた、何週も廻っているのに悠太には、いっこうに声は掛からないし、日も段々傾きだした。