*片翼の天使*

貼紙事件から2週間と少し経ったある日……俺は、トモカちゃんに放課後、体育館裏に呼び出された。





来ないな……。




時間になっても、トモカちゃんは姿を現さない。

体育館裏は、心地よい風がふいていた。

……待ち合わせから、15分経過。




「ごっめ~ん! 待ったよねぇ」


「大丈夫だよ」

内心、ずっと立っていて、かなり疲れていたが、笑顔を作った。


「貼紙剥がしてた時、ちょっと喋ったけど、こうやって、ちゃんと話すのは初めてだよね? 」

「初めてって言うか……高校じゃ喋ったことなかったけど、小学生んときクラス一緒だったよね? 」

俺の記憶が正しければだけど。

「えっ?」

トモカちゃんは、必死に考えてるようだった。

「あぁ!
もしかして、ハル君?
うっそ~! マジで? 入学式で姿見かけた時、なんか見たことある気がしたけど、私、やっぱり知ってたんだ」

俺のこと忘れてたんだね。


「そう、あのハルトだよ」

「いやぁ~懐かしいねぇ。
まぁ昔話は、後にして、ナズナのことなんだけど」

トモカちゃんは、急に真剣な顔つきになった。

「うん」

「あの子、そうとう無理してると思うのよ。
一人で、抱え込む癖あるし」

やっぱり、そうだよな。

「そこで、相談なんだけど、私たちで貼紙と嫌がらせの犯人捕まえない?
ナズナは、大丈夫、気にするな、の一点張りだけど、私心配で」

トモカちゃんが、心配そうな顔をしている。
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