*片翼の天使*

ハルトのこと、ほんとは知っていた……。
思い出したんだ。


……けど、言うわけにはいかなかった。

あたしは、ナズナであってナズナではないから……。


王子とは、あまり関わらないようにしよう。

あたしは、固く心に誓った。








校庭まで走って来て、トモカが歩いているのが見えた。


「ナズナァ~ここにいたんだ!
教室にいないから探したよ!
……?
どした? 深刻な顔して? 」


トモカは、あたしの異変に気がついたようだ。


「ううん……なんでもない」


トモカに、心配かけるわけにはいかない。
だから、無理矢理笑顔を作った。


「そぉ?
じゃ、帰ろっか!
今日、ナズナの家寄ってっていい? 」


「別に~」


平静を装っていたけど、バレバレだったのかもしれない。
トモカは、真剣にあたしの顔を見てくる。

「やったぁ~!」


こうして、トモカは、今日家に遊びに来ることになった。
< 15 / 196 >

この作品をシェア

pagetop