*片翼の天使*
ハルトのこと、ほんとは知っていた……。
思い出したんだ。
……けど、言うわけにはいかなかった。
あたしは、ナズナであってナズナではないから……。
王子とは、あまり関わらないようにしよう。
あたしは、固く心に誓った。
校庭まで走って来て、トモカが歩いているのが見えた。
「ナズナァ~ここにいたんだ!
教室にいないから探したよ!
……?
どした? 深刻な顔して? 」
トモカは、あたしの異変に気がついたようだ。
「ううん……なんでもない」
トモカに、心配かけるわけにはいかない。
だから、無理矢理笑顔を作った。
「そぉ?
じゃ、帰ろっか!
今日、ナズナの家寄ってっていい? 」
「別に~」
平静を装っていたけど、バレバレだったのかもしれない。
トモカは、真剣にあたしの顔を見てくる。
「やったぁ~!」
こうして、トモカは、今日家に遊びに来ることになった。