アネモネ


別れを告げて早3日。


特に変わりなく過ごしてる。

強いて言うなら、綺麗な女の子たちに囲まれる彰を探さなくていいから、時間に余裕がある。(もちろん、気持ちの余裕も。)



「はよー、紫音」

「あ、おはよ〜」

「相変わらず、うん。」

「私は中の中ですー。満は綺麗よね」


う、うるせえ!と顔を真っ赤にして抗議するのは、藤嵜 満(フジサキ ミツル)。
男っぽい名前だけど、女。
すごく綺麗な子なんだな、これが。

満曰く、私は可愛い寄りの美人らしい。
(毎度の否定は恒例。)



「最近、どう?落ち着いた?」

「‥うん、大分慣れた。」

「そっか。」


高1になってから仲良くしてて、クラスもずっと一緒。そんなこんなだから、満には色々お世話になってる。

彰に別れを告げた次の日、満にはちゃんと報告した。何度も鬱憤を聞いてもらったし、何せ年上彼氏持ちの仲間だからね。



「それより!満はどうなの〜?」

「いや別に変わりは、ない」

「(にやにや、にやにや)」

「あああああっ!分かった!言うよ!」

「んふっ」



んふじゃねえっ、と思いきり頭を叩かれたが愛情としてスルーする。


それからは2年がよく使う廊下を慣れた足取りで進めていき、話をする。満のこの前のデートのこととか今までのプレゼントとか、
いっぱい。






それで、いつも思う。




満が『羨ましい』、と。

毎日彼に会って心から幸せだと笑える。
愛情を受け取ってもらえて、返ってくる。


優しく触れてくれる、
自分を見てくれる、
自分にだけ笑ってくれる、


そんな彼氏を持つ満が、羨ましかった。



_
< 10 / 25 >

この作品をシェア

pagetop