アネモネ
自分から別れを選んだくせに今もまだ苦しい私は、満に言った「慣れた」を訂正しなきゃいけない気がした。
「(ほんと、タイミングが悪い)」
ぶつかった相手は彰で、悩みの根源である人。
この人は本当にいつもタイミングが悪い。
他の女の人とキスをしてるとき、
手を繋いでるとき、抱きしめてるとき、
腰に手を回してるとき、頭を撫でてるとき。
全てのタイミングで私は彰と対面した。
1番衝撃だったのは、セックスしてたとき。
(あのときは1週間、彰に接触しなかった。)
「紫音‥?」
「‥!」
思考の波に漂う意識を引っ張り上げたのは
聞いたことがないような優しい声。
それを聞いたとき、捻くれてる私は無性に
イライラした。
「紫音、大丈夫?」
「‥ばな、で‥さ、」
「ん?」
「呼ばないでください、名前」
「‥っ」
「いつかのベッドの彼女にでも、その優しい声で名前呼んであげてください。」
大好きだったと過去を塗り固めたら、
きっと私はもっと楽になる。
なのにそれをしないのは、
まだ私は彰が好きで、好きで好きで‥
どうしようにも思い出を消したくないから。
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