アネモネ


(彰SIDE)


「なあ、紫音。」

「な、まえ‥っ」

「もうチャンスは、ない?」

「‥っ」

「やり直すチャンス、俺には‥ない?」




傷付けて失って、それで気付いて、チャンスを求めるなんて自己中心的過ぎて笑える。



それでも俺は、求めた。



でも、紫音は無言で走り去った。


『堪えられないよ』と、言い残して。




「ははっ、だよなー‥っ」


答えなんて、返ってくるはずないんだ。



俺には紫音が泣いてる理由の半分も、
きっと理解出来ていないのだから。



大事にするから、傷付けないから、
手放さないから、ちゃんと君を見るから。




どんな言葉も、今更過ぎる。



それを知っていてもまだ、君を求める俺を
周りは滑稽だと腹を抱えて笑うだろう。



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