アネモネ
(彰SIDE)
「別れる」
その意味が分からないわけじゃない。
ただ単に、急だったから。
「紫音、」
「何ですか、如月先輩。」
「っ‥何で?」
理由なんか分かってる。
俺自身の招いたこと、全部。
でも、なんだかくるしい。
それと一緒に込み上げるのは、色んな感情。
名前、もう呼んでくれないの。
なんで誕生日にあげた香水つけてるの。
なんでこっちを見てくれないの。
どうして別れの理由を言わないの。
なんで泣きそうな顔で別れを告げるの。
「待てよ、」
俺の前で初めての表情を見せた紫音は、
涙が溜まりに溜まった瞳を一瞬だけこちらに向けて、走り出した。
「‥‥っあ、あ゙あああ゙っ」
今更過ぎる叫びも、愛も、伸ばした手も、
求める人には届かない。
最後に聞こえたのは、
さようなら、大好きな人。
「‥‥ご、めん」
ああ、届かない。
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