アネモネ
(彰SIDE)
本気で好きだった
そう言われて、あまりにも気持ちにしっくりはまって、ああ、そうだったんだと、人事の様に納得してしまった。
「‥‥あっそ」
「うわ、彰ったら未練タラタラ」
「なんでそうなる」
「不機嫌度はマックス、紫音ちゃんからもらったネックレスはまだつけてるし、現在進行形で3年の階に遠回りなのにも関わらず2年がよく使う廊下を歩いてる。」
「‥うるさい」
図星だ図星、なんて呟きながら首をゴキリと鳴らした海にそのまま首折っちまえ、と毒を吐いた。
ひどーい、と泣きまねをする海を軽く流して何となく目線を右から左へツー‥、と移す。
「(見つかるわけない、か)」
この3日間、気付けば紫音を探してた。
常に探してたけど、後ろ姿すら見ていない。
顔を見るなんて、夢のまた夢だ。
それで気付いた。
こんなにも1日の流れに共通点がないのに
紫音に毎日会えて話せたのは、紫音が俺のことを探して見つけて、近くに来ては笑いかけてくれたからだ、と。
「‥‥今更、だよな」
「失ってから気付くってやつか」
「‥‥なんで分かる」
「大体分かるさ。口に出てたから」
「マジか」
あまりのショックさに気づかなかった。
懐かしい香水の匂いが、すぐ後ろにあることに。
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