声の王子様 ①
「ごめんなさい突然。私、真白高校一年、高梨チカと言い
ます。貴女とは趣味が合いそうだからお友達になりたい
んです。いえ、なりましょう」
イヤホンを抜いた彼女の目に
黒いゴムで髪を二つ結びにした自分の姿が映っている。
「趣味………?
どうして………?」
「見れば分かります、それくらい」
そう言った途端、戸惑いの色ばかりだった彼女の大人しい顔がパッと輝き、
何度もうんうんと頷いた。
そんなに喜んで貰えるなんて
光栄だ。
私も嬉しい。
声を掛けて良かった。
「アタシ、黒羽高校一年、関谷晴香。語り合える人が塾でできるなんて嬉しい」