声の王子様 ①
そんな筈、ある訳がない。
馬鹿な事を考えてしまった。
そう思ったのも束の間。
「ほっとけ。大体、君が思ってる以上にオトナだよ? あの子」
低くもなければ高くもない。
中音で、澄んだ声―――ただ単純にいい声だなと
思った時には、線の細い男が
出て来てゆっくりドアが閉まった。
「ごめんね。うるさくして」
微笑むその姿に私は目眩を
起こしてしまう。
眩しい。何故?
どうしてこんなにも
キラキラと輝いて見えるのか。
こんな、
眩しい人だった?