近々未来な彼
甘いポップコーンの香ばしい映画館特有の匂いがする。
「映画までまだ時間があるけど、
先にご飯食べにいく?」
「あ、そうですね。えーっと…」
ご飯は家を出る前に食べてきたばかり。
かと言って何か他に行きたいところも思いつかない。
ヴーヴー
あれ、私のケータイ鳴ってる?
鞄の中をごそごそとあさる。
「悪い。俺のだ。」
薄暗い映画館の前。
ディスプレイをみた先輩の表情は少し困ってるように見えた。
ヴーヴー
鈍いバイブ音はなかなか鳴り止まない。
メールじゃなくて電話なんだろうな。
「どうぞ。出てください。
急ぎの用事かもしれないですし。」
「ごめん、ありがとう。ちょっと時間かかるかも。」
「わかりました。そしたら下の階の本屋さんにいますね。」
その場から離れる私に、先輩は柔らかい笑みをみせて、了解の合図に手をあげた。
*