男子校に迷子の子猫
「せっかく進学校に受かって喜んでたのに…このまま入学しないつもりか?」
そんなことを言いながらも、お父さんはコーヒーを飲んでいる。
「自分から行きたいって言ってたのに。お兄ちゃん」
小中と、通う学校が同じだった私たち。
高校で初めてお互いの望む 違う道に進もうとしていた矢先だった。
とは言っても、私の通う高校とお兄ちゃんの通う高校は同じ敷地内にある。
白岩茜女子高等学校、は私が。
白岩葵男子高等学校、はお兄ちゃんが進学する。
この2つの学校は白岩という敷地内に隣接していることになる。
でも、簡単に行き来出来るわけではないらしい。
ちゃんと2つの学校それぞれにセキュリティがあって、そこを潜り抜けないと学校に入れない仕組みになっているとの噂を聞いたことがある。
「このまま真央が帰って来なかったら…学校はどうなっちゃうのかしら」
坂井家で、一番精神状態が危ないお母さんが沈黙を破った。
「んー…とりあえず、学校に事情を説明しないとな」
お兄ちゃん、本当にどこ行ったんだろう────?もしかして家出の途中で、誰かに誘拐されちゃったりとか。
でもまさかね。小さい頃から空手を習ってたお兄ちゃんに限ってそんなことないよね。
「早めに言っておいた方が良いわよね。今から行ってみませんか?」
「今から?さすがにもう遅いだろ。今日電話しておいて、明日伺えばいいんじゃないか?」
お父さんは伸びをして立ち上がった。
「今日の夕飯は何だ?」