男子校に迷子の子猫
「とりあえず。真央はこのまま学校に居られることになった」
「…ほ、本当?」
さっきから何も言わないお母さんを見ると、ほほ笑みながら頷いていた。
「でも、条件があるらしいんだ」
何か、すごく嫌な予感しかしないんですけど。
やっぱり、妹の私が巻き込まれる感じですかね…
「真紀が真央の代わりに学校に行くっていうのが条件らしい」
ほらやっぱり。私に関係していることだ。
私がお兄ちゃんの代わりに…ん?私がお兄ちゃん?え?学校に行くの?
「無理無理無理!!!」
いくらお兄ちゃんのためって言っても…私の楽しい高校生活が待っているわけだし。
「それに私、これでも一応女だよ?」
男子校に通うなんて到底出来っこない。
「茜高校と葵高校の校長が、父さんの古くからの友人でな」
ん?お父さん。いきなり何の昔話ですか?
私はそういうのが聞きたいんじゃなくて────…
「ほら。ちょっと言い方悪いけど、葵の方が茜より進学校だろ?」
「あ、うん」
言い方どうのこうのじゃなくて───いや、実際そうだし。
同じ敷地内にあるからって、学力も同じというわけではないらしい。
茜も十分進学校だけど、葵がずば抜けて進学校だからしょうがないんだよね。
「だからやっぱり、その進学校の生徒が学校に来ないのはちょっと困るって言われてな」
あ、何か話の前方が見えてきたような気がする。
「それでなくても、真央は上位の成績で入学したらしいから…」
「だから、とりあえずお兄ちゃんが帰ってくるまで私がお兄ちゃんの代わりを?」
「そういう、ことだ」
お父さんは下を向いた。