学生さん
第1章
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 あたしは今年の三月中旬に在籍していた大学を無事卒業した。


 開告大学(かいこくだいがく)文学部英語学科に四年間いて、卒業前に進路が決まっていた。


 付属の大学院への進学である。


 あたしは確かに地方の辺鄙(へんぴ)な場所から今住む街に来ていた。


 街は人口が百万人ほどいる地方の中都市だ。


 あたし自身、街の雰囲気にすっかり慣れてしまって、楽しいキャンパス生活を続けられた。


 四月から晴れて大学院生である。


 大学時代は古い文献などを原典で読みながらレポートや論文などを書いていたし、卒論もヘミングウェイだったが、大学院では実用的な英語を学ぼうと思っていた。


 実際に使える英語を学んでいこうと感じている。


 幸い開告大は図書館が充実していて、あたしも本を探す際に苦労せずに済んだ。


 館内のパソコンにキーワードを入れるだけで、蔵書が探せるからだ。

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