学生さん
 今、世の中大勢の作家がいて、皆が日の目を見ようとしているからだ。


 あたしは彼がもし、今度の公募でグランプリを獲れば、完全に専業になるものと思われた。


 売れるか売れないかは別として、原稿の依頼が来ることは間違いない。


 実際、作家は地味な活動をする人が多い。


 あたし自身、そういったことは十分分かっているのだった。


 謙太は抱いている気持ちこそ熱かったのだが、物事を見極めるときは幾分クールなところがある。


 おそらく、これから先伸びていくだろう。


 あたしは今、砂の熱さを感じ取っている。


 六月下旬のビーチの暑さは、それまでの涼しい季節をまるで翻(ひるがえ)すかのようだった。


 あたし自身、そんなことを思いながら、彼と一緒にいる。


 幾分夏バテ気味で、きつさは感じ取っていたのだが……。


 それにカサ研に詰めている間は、研究せざるを得ないわけだし……。
< 102 / 200 >

この作品をシェア

pagetop