学生さん
 別に自分に関係がない人とは話をしない。
 

 まあ、カサ研は英語の達人が集うところだから、ほとんどの学生が学問的レベルは高かったのだが……。


 あたしは毎日、カサ研でマシーンに向かいながらも、ずっと考え続けていた。


 これから先の研究生活のことを。


 河西は六十代後半でもうすぐ定年を迎えるのだが、あたしは後任の教官に付いてもいいと思っていた。


 多少専攻などが違っていたとしても、若干なら修正は利く。


 あたし自身、そう思いながら毎日を送っていた。


 確かに不安といえば不安なのだが……。


 教官が変われば、研究スタイルもガラッと変わるのが目に見えていたし。


 それに今はゼミ室でも皆、ノートパソコンを立ち上げてディスプレイを見ながら授業を受けている。


 時代は変わったのだった。

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