学生さん
うなものを覚えていた。


 言わずもがなで、こういった専門的なことを大学の研究室でやっている人間は企業などへの就職がまず無理だ。


 あたしは腹を括っているところもあった。


 それに今が一番旬なのかもしれない。


 あたし自身、学部時代に感じられなかったことを今になって考えている。


 毎日研究室に詰めながら、同時に謙太のことも思う。


 大学を正門から出て、自宅マンションに帰り着いたら、ストッキングを取って裸足になる。


 そしてバッテリー切れ寸前のケータイを充電器に差し込み、彼にメールを打つ。


 大概、返信は翌朝までには欠かさず着ていた。


 多分、遅い時間帯までパソコンのキーを叩いたり、ケータイのメールを打ったりしているのだろうと思う。


 あたしはそんな謙太を察していた。

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