学生さん
 あたしは謙太が原稿を書き上げて送ってしまったら、一度街にあるお洒落なカフェで一緒にお茶を飲むつもりでいた。


 そんなことが頭からなかなか離れない。


 あたし自身、ずっとキーを叩き、必要な文献はフラッシュメモリに取り込んでから、それを元手に論文などを書くのだ。

 
 このデータ収集の作業が実に大変なのである。


 いくら英文に接していて慣れているとはいえ。


 あたしは検索エンジンをフルに使う。


 データベースに入っている研究者の論文などの文献はたくさんあって、あたしは無数にあるものからチョイスして整理しながら、自分が論文を執筆する際の参考にしていた。


 もちろん引用などもある。


 先駆者が書いたものの中から。


 それにあたし自身、先輩研究者たちが書いたものを読み進めながら、共感できるものがあったのも事実だし……。


 毎日がその作業で終わり、七月も半ばを迎えようとしていた。
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