学生さん
「でも、謙太がせっかく入学した大学院を中退しちゃった気持ちも分かるわ。あたしも受けなきゃいけない院の授業が最近少し退屈だし」


「だけど、君はちゃんとやるつもりなんだろ?研究者目指して」


「ええ。でも、ちょっとブレーキ掛かっちゃってる。どうすればいいのかなって」


「一応、上の人間たちには逆らわないで、都合の悪いことがあっても口には出さない方がいいよ」


「うん。それは分かってるつもりなんだけど……」


 あたしが言葉尻を濁し、近くに置いていたカップに淹れていたコーヒーを飲む。


 夕方で食事時だったので、


「今から炒め物作るから待ってて」


 と言った。


「ああ。久々だな。君が作った料理食べるのは」


「あたしもここ最近、ずっと学食ばかりだったから、たまには自炊するわ」


 あたしが笑顔になり、謙太をリビングに待たせる。
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