学生さん
 あたし自身、比較的落ち着きつつあった。


 もちろん謙太も来てくれるだろう。


 あたしの発表を聞きに。


 いくら河西と意見が合わないからと言っても、彼はあたしが晴れの舞台で活躍するのを楽しみにしてくれているようだ。


 それまで絶えず原稿を書き綴りながら、である。


 今回謙太が公募した新人賞は来年審査結果が出るから、それまでにまとめて原稿を書き溜めるつもりでいるようだった。


 仮に受賞でもしたら、主催する出版社サイドは次の作品――いわゆる受賞後第一作というやつだが――を要求してくるからである。


 出版も最近はビジネスになりつつあった。


 彼が商品価値のあるものを書くか書かないかは別だ。


 ただ、あたしは思っている。

 
 ちゃんとしたものを書いて欲しいと。

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