学生さん
 空はどこまでも晴れ渡っていて。


 雲が一つもない春の日だ。
 

 あたしは食事を取り終えて、付合わせで買っていた緑茶のボトルに口を付け、ゆっくりと呷る。


 研究ばかりだと疲れるのだが、あたし自身、学校に残るという気持ちに変わりはない。


 河西が退職すれば、後任の教授には今現在准教授の桃山が就くことになるだろう。


 あたしは桃山とも懇意にしている。


 元々南米文学が専門の桃山は、あたしとも意見が合う。


 それに英語の研究というのは英語圏の文学を専門にしている人間なら、誰でも構わないのだ。


 つまり幅が広い。


 ジャンル横断的に知っておかないと、教える立場になったとき、教壇に立てないから過酷だ。


 英米文学自体、研究成果が出尽したといっても、まだ掘り下げて考えることは可能である。
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