学生さん
「あたしは思ってたわ。謙太が早く出世する方だったって」


 ――それって君の思惑?


「それもある。でも、あなたがとても熱心に物事に取り組む姿勢があるのは分かってたから、どこかで努力が結実するんじゃないかって」


 ――そう思ってくれると嬉しいよ。


 謙太がそう言って笑う。


 朝早く起きて原稿を書き、所定の枚数まで書き終えたら、テレビドラマなどを見るのが彼の日常だ。


 合間にメールを通じて、編集者とゲラのやり取りなどもするらしい。


 あたしは彼がとても充実しているのが分かっていた。


 そして月日が流れ、あたしもその年の年末に修論を無事出し終える。


 来年三月には院の卒業式があり、あたしは修士号をもらったら、帰国するつもりでいた。


 また開告大のキャンパスに桜が咲いたら、その木の下で会おうと約束していて。


 おそらく蕾は色鮮やかだろう。
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