学生さん
 寒い冬を耐えて生き抜いた桜の木は力強いからだ。


 あたし自身、謙太とまた会うつもりでいた。


 あたしは実際のところ試験などなしで、提出した書類の選考と執筆した研究論文の査定のみで、すでに開告大の院の博士課程に合格していたのだ。


 キャンパスの桜の下で会うとき、あたしは彼を目の前にして一体何と言うだろうか……?


 想像もつかなかったのだが、おそらく思えるのは、


“長かったわね”
 

 ということだろう。


 あたしはそれぐらい彼と会えない間は辛かった。


 だけど、もうすぐ会えるというときになって思える。


 温かくなれば桜が咲くように、あたしたちの間にある桜の木の枝にも花が咲くだろうと。


 そしてあたしは翌年の三月にキャンパス内で行なわれた院の修士課程の修了式に参加した。

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