学生さん
第30章
     30
 その年もキャンパス内に桜が咲いていた。


 木々の先端にある蕾が一斉に花開く。


 ピンク色の花が色付いていた。


 あたしは開告大文学部大学院の博士課程の一年生として、これから三年間をここで過ごすことになる。


 ドクターコースはそれまで地味に研究を続けてきたあたしにとって、そんなに難しいものじゃなかった。


 むしろこれから三年間真剣に研究すれば、無事博士号が取れて、大学に残れると思うとやりがいがある。


 河西の退官、名誉教授就任と同時に、准教授から教授になった桃山が実質的に学科を取り仕切った。


 あたしはその桃山に付き、研究し続ける。


 河西の研究室は残されたままだったが、実質河西は名誉教授で、大学には週に一度ほどしか来なかったので、名前もカサ研ではなく<モモ研>となった。


 モモ研に集う学生はあたしのような院でも博士課程にいる学生ばかりじゃない。

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