学生さん
「充実してるみたいでよかった」


 あたしがそう言って笑顔を見せた。


 彼が外に停めていた自転車の方を向き、


「今日もチャリで行こうね」


 と言う。


「ええ。まだ気力あるわよ」


「君も二十代半ばだからな。座りっぱなしの仕事だと、結構疲れるだろ?」


「うん。でもそれは謙太も同じでしょ?」


「まあね。だけど慣れればそうでもないよ。俺の仕事は原稿打つことだからな。ゲラのやり取りももちろんあるけど」


「たまには執筆お休みして、ゆっくりしてね」


「ああ、分かってる。だけど出版社サイドも俺に原稿書かせたがるんだな。もちろん、本出せばある程度の収入にはなるんだけど」


「謙太の本って増刷掛かるからね」
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