学生さん
　最近、以前ほど本を読まなくなっている。


　あたしが新米ながらも一研究者として、ちゃんとした研究を続けられると思っていたので、昔のように万巻(まんがん)の書を読まずとも済んだのだ。


　別に有名な学者の本や専門以外の知識について言及(げんきゅう)してある本は読まない。


　幸い河西教授に付けば、後は最低でも二年間お世話になれる。


　博士まで行けば大変なことになるのだが、あたしはそういったことは覚悟の上だった。


　英語を勉強するのはとても楽しいことだと感じていたし……。


　それに今更実家に帰ったとしても、ろくな仕事はないだろうから……。


　開告大にいても嫌なことはたくさんあったが、しばらくは謙太と付き合いながら、同時に研究も進めていくことで、あたしは納得できていた。


　確かに修士在籍中の二年間と、博士の三年間は専門の本を読んだり、他の研究者たちが執筆している論文などを読むことは分かっていたにしても……。


　それに二十二歳という今が一番、ときめく時期だ。

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