学生さん
 彼女もあたしと同じく英米文学が専門である。


 確か博士論文はシェイクスピアがテーマだと言っていた。


 古典文学はたくさん読んできているらしく、あたしとは話をしていて、噛み合う。


 大学の助手というのは実に大変だ。


 上手く出世すれば助教になって出世コースに乗るのだが、そうじゃない間は普通に3K労働のような感じである。


 美智香は一応、助手の身で一日中カサ研の監督をしているのだが、あたしは、


“この人も大変だったのね”


 と思うことがあった。


 あたしは美智香が専門に選んだ領域――つまりイギリス文学だが――は、普通にマニアの世界だと感じる。


 それにかなり研究が進んでいて、今文献を読み返しても、新しい事実が発見されることはまずない。


 あたし自身、美智香はあと数年助手を務めたら、これから先どうするか決めると思っていた。
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