学生さん
 大学院は大学にとっては頭脳の集積であり、いろんな研究成果が日々出される。


 あたしはずっと授業に出続けながら、そんなことばかり考えていた。

 
 謙太はあたしが院に入ってからすぐに、一度授業に来ていた。


 真面目にやる気があるかないかは別にしろ、一応最初ぐらい出ておこうと思ったのだろう。


 院はゼミ室など各人のレポートの報告などを主体とした授業を行なう。


 特に人文科学系統の学部の院はそういったところが多い。


 あたしは授業以外はほとんどの時間、カサ研に詰め、研究をする。


 データベースに載っている英文を読みながら、古い英語も、そして最近出された幾分読みやすい資料などにも目を通す。


 あたし自身、毎日検索エンジンをフル稼働させながら、研究を続けていた。


 卒論のヘミングウェイは四百字詰原稿用紙に換算して百枚だった。


 私立大学の文系の卒論では多くも少なくもない。


 ちょうどいいぐらいの分量だ。
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